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HARRIS TWEED ISLAND -Ⅰ-

11/17/2014


ちょうど1週間前、ロンドンへの出張にからめて約10年ぶりにスコットランドのハリス&ルイス島に行ってきました。
そう、ファッション業界の皆さまや洋服好きの方はよくご存じのハリスツイードの故郷です。
非常に有名ながら地理的なこともありなかなか訪れることができないこの島の今を、これから2回に分けて大特集させていただきます!

首都グラスゴーに前泊し朝7時の便に乗り込むと、雲海の上を島のあるアウターヘブリディーズ諸島へと飛んで行きます。




50分ほどでハリス&ルイス島の中心地ストノウェーに到着。
人口約2万人のこの島唯一の飛行場は、建物も体育館ほどの大きさしかありません!




工場の方にピックアップしていただき、3つあるハリスツイードミルのうち最大のHARRIS TWEED HEBRIDES(ハリスツイード ヘブリディーズ)のあるショーボスト地区まで30分ほどのドライブ。
(日本人的な感覚で言うと)かなり田舎の駅の商店街のような懐かしい町並みを抜けると、すぐにこのような自然が広がっています!




朝焼けに照らされる車窓からの景色はこの素晴らしさ!
とあるジャーナリストの方が「ハリスツイードの多くのカラーは、この島の自然の色彩から来ている」と仰られていましたが、本当にその通りだと実感しました。。。
暖流の影響で本土同様に雪は少ない気候ですが、やはり冬の気温は寒く、吹きさらしの風もあり高い木は殆ど見られません。




景色を楽しみながら走っていると、間もなく湖の向こうに工場が見えてきました。
以前はKENNETH MACLEOD(ケネス・マクロード)社の工場だった施設を、7年前の業界再編時に同社が取得し現在も操業を続けています。
詳細は割愛させていただきますが、7年前の再編時は「ハリスツイード消滅の危機」として日本でも大きな話題になりましたが、島内外の大きな期待を受け新生HARRIS TWEED HEBRIDESが誕生しました。




まずはショールームで温かい紅茶をいただきながら打ち合わせ。
弊社はHARRIS TWEED HEBRIDESのもう一つの前身であるKENNETH MACKENZIE(ケネス マッケンジー)時代から数十年の取引があり、色々と話が尽きません。
飾ってあったこちらの生地台帳は1950年代のものだそうですが、この頃にはもう取引が始まっていたかも知れません。。。



さあ、工場見学がスタート!
屋外には大量のチェビオットウールが積まれています。

日本では一部誤解されているようですが、ハリスツイードの原毛は「100%ヴァージンウールでなくてはならない」とのみ規定されており、必ずしもこの島やスコットランド産である必要はないそうです。(この島で多く飼育されているブラックフェイス種は、繊維が粗野なためハリスツイードには向きません)
ただ、今までは全てスコットランド産でまかなえており、他所のウールを使用したことはないとの事。




ハリスツイードの製造工程は、まず原毛の染色から始まります。
黒無地以外の色柄は全て多色の毛を混ぜた糸を使う為、様々な色へと染められていきます。


 

床面に開けられた穴は繊維をミックスする機械に繋がっていて、様々なカラーに染められた羊毛をダイナミックに落としていきます。一本の糸に多くのカラーが使われていることがよく分かります。



さて、いよいよ紡績(糸作り)です!
フランネルなど、その他の紡毛素材と同じようにカーディングと呼ばれる工程で繊維が揃えられ糸に近い状態まで持っていきます。




そしてしっかりと撚られることでいよいよ糸の完成です。

ここで一つ申し上げたいのですが、よく日本で「ハリスツイードは手紡ぎ、手織りの伝統素材」と謳われますが、(人力織機で織られる工程は広義で手織りとしても)近代のハリスツイードの糸は全て機械で紡績されています。特にファッション・出版業界の方にはここは是非ご注意いただきたいところです。





ワーピングと呼ばれるこの工程で経糸(縦糸)が揃えられ、製織の準備が整います。
下写真の大きな糸巻きの状態でウィーバー(製織職人)の自宅に送られます。

そう、ハリスツイードの製造工程のなかで、唯一製織のみが外部の職人によって(そして人力で)行われるのです。




外部のウィーバーを訪れた模様は次回ご紹介させていただきますが、工場内部にもサンプル生地作成用に新旧2台の織機があります。そのうちの1台を実際に体験させていただきました!
そちらも次回。。。