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HARRIS TWEED ISLAND -Ⅱ-

11/25/2014


前回からの続き、ハリス&ルイス島の訪問記です。
3社あるハリスツイードミルのうち最大のHARRIS TWEED HEBRIDES(ハリスツイード ヘブリディーズ)では他のミル同様に「製織」以外の工程全てを行いますが、工場内にはサンプル生地製作用の織機が2台あり日々稼働しています。

こちらはシングル巾(ウエイトの重いクオリティー)用の古い足踏み式織機。2枚のペダルを交互に踏んで動かすためかなりのスタミナがいります。




こちらは現在主流のサイクル式織機。私も体験させていただきました!
スピードを一定に保たないといけなく、それなりにコツがいります。
現在HARRIS TWEED HEBRIDESには約140人の契約ウィーバー(製織職人)がおり、実際に流通されるハリスツイードは全て職人の自宅で織り上げられます。




仕上げ工程に移動する途中、生産管理と商品開発を行う部屋にお邪魔しました。
こちらは染色の基本カラー。前回書かせていただいた通り、黒無地以外のハリスツイードは全てトップダイ(原毛染め)の繊維をミックスした糸を使う為、これらのカラーをブレンドすることで無限大の数の色糸を作ることができます。(黒無地は黒に染めた原毛をそのまま単色で使用)




こちらはパレットと呼ばれる器具(おろし金を2枚組み合わせたようなもの)を使い2色の羊毛をブレンドするところ。新色や別注色などはこうやって手作業で生み出されます。
これを指で撚ると糸になっていきます!




さて、職人の自宅での製織から戻ってきた生地はしっかりとチェックされたあと、仕上げ工程に回されます。




ウェットフィニッシングからドライフィニッシングに至る仕上げ工程はその他の英国伝統服地とそれほど変わりませんが、服地のキャラクターを左右する大切な工程なので熟練職人がよく注意しながら時間をかけて行います。




最後に4人がかりでチェック(&織り込んだ物の除去)を行い、スチームでアイロンをかけて全製造工程の終了です!




織り上がったハリスツイードはハリスツイード協会の検査員が再度全てチェックし、パスした反物のみがスタンプを押されます。これで初めて出荷が可能となります。




この後、20年間ウィーバー(製織職人)をしている方の自宅を訪ね、実際に流通するツイードの製作現場を見せていただきました。フルタイムのこの方でも1反(約65m)を織るのに1.5日かかり、1ヶ月の生産量は12反程。「ずっと漕いでて疲れませんか?」と聞くと、「この島にはマラソンとかフィットネスは必要ないんだよ!」と笑って答えてくれました。




空港への帰り道、10年前に訪れた観光施設(ウィーバー達が暮らした家々を再現した場所)を訪れました。あいにくオフシーズンで織機の実演はしていませんでしたが、10年前にお会いし織機を漕いでくれたおばちゃんと再会しました。お元気そうでなにより!
家々の裏に置かれている山はピート(泥炭)の山で、島では今でも燃料として使用されています。
スコッチなどの味にも影響を与えていると言われ、スコットランド人の生活にはかかせ欠かせない資源です。




この島に1割もあるか分からない市街地以外はこのような美しい景色で溢れています。(上写真はストーンヘンジのような古代遺跡)

10年ぶりとなった今回の訪問も日帰りの駆け足となりましたが、ハリスツイードとこの島のことを学び直す大変貴重な機会になりました。1週間続いていた雨も止み、私が訪れた日は快晴!島の神様にはこの場をお借りし感謝いたします。

この島の文化と色彩が溶け込んだ唯一無二のハリスツイード。一生もののジャケットはもうお持ちですか!?

HARRIS TWEED ISLAND -Ⅰ-

11/17/2014


ちょうど1週間前、ロンドンへの出張にからめて約10年ぶりにスコットランドのハリス&ルイス島に行ってきました。
そう、ファッション業界の皆さまや洋服好きの方はよくご存じのハリスツイードの故郷です。
非常に有名ながら地理的なこともありなかなか訪れることができないこの島の今を、これから2回に分けて大特集させていただきます!

首都グラスゴーに前泊し朝7時の便に乗り込むと、雲海の上を島のあるアウターヘブリディーズ諸島へと飛んで行きます。




50分ほどでハリス&ルイス島の中心地ストノウェーに到着。
人口約2万人のこの島唯一の飛行場は、建物も体育館ほどの大きさしかありません!




工場の方にピックアップしていただき、3つあるハリスツイードミルのうち最大のHARRIS TWEED HEBRIDES(ハリスツイード ヘブリディーズ)のあるショーボスト地区まで30分ほどのドライブ。
(日本人的な感覚で言うと)かなり田舎の駅の商店街のような懐かしい町並みを抜けると、すぐにこのような自然が広がっています!




朝焼けに照らされる車窓からの景色はこの素晴らしさ!
とあるジャーナリストの方が「ハリスツイードの多くのカラーは、この島の自然の色彩から来ている」と仰られていましたが、本当にその通りだと実感しました。。。
暖流の影響で本土同様に雪は少ない気候ですが、やはり冬の気温は寒く、吹きさらしの風もあり高い木は殆ど見られません。




景色を楽しみながら走っていると、間もなく湖の向こうに工場が見えてきました。
以前はKENNETH MACLEOD(ケネス・マクロード)社の工場だった施設を、7年前の業界再編時に同社が取得し現在も操業を続けています。
詳細は割愛させていただきますが、7年前の再編時は「ハリスツイード消滅の危機」として日本でも大きな話題になりましたが、島内外の大きな期待を受け新生HARRIS TWEED HEBRIDESが誕生しました。




まずはショールームで温かい紅茶をいただきながら打ち合わせ。
弊社はHARRIS TWEED HEBRIDESのもう一つの前身であるKENNETH MACKENZIE(ケネス マッケンジー)時代から数十年の取引があり、色々と話が尽きません。
飾ってあったこちらの生地台帳は1950年代のものだそうですが、この頃にはもう取引が始まっていたかも知れません。。。



さあ、工場見学がスタート!
屋外には大量のチェビオットウールが積まれています。

日本では一部誤解されているようですが、ハリスツイードの原毛は「100%ヴァージンウールでなくてはならない」とのみ規定されており、必ずしもこの島やスコットランド産である必要はないそうです。(この島で多く飼育されているブラックフェイス種は、繊維が粗野なためハリスツイードには向きません)
ただ、今までは全てスコットランド産でまかなえており、他所のウールを使用したことはないとの事。




ハリスツイードの製造工程は、まず原毛の染色から始まります。
黒無地以外の色柄は全て多色の毛を混ぜた糸を使う為、様々な色へと染められていきます。


 

床面に開けられた穴は繊維をミックスする機械に繋がっていて、様々なカラーに染められた羊毛をダイナミックに落としていきます。一本の糸に多くのカラーが使われていることがよく分かります。



さて、いよいよ紡績(糸作り)です!
フランネルなど、その他の紡毛素材と同じようにカーディングと呼ばれる工程で繊維が揃えられ糸に近い状態まで持っていきます。




そしてしっかりと撚られることでいよいよ糸の完成です。

ここで一つ申し上げたいのですが、よく日本で「ハリスツイードは手紡ぎ、手織りの伝統素材」と謳われますが、(人力織機で織られる工程は広義で手織りとしても)近代のハリスツイードの糸は全て機械で紡績されています。特にファッション・出版業界の方にはここは是非ご注意いただきたいところです。





ワーピングと呼ばれるこの工程で経糸(縦糸)が揃えられ、製織の準備が整います。
下写真の大きな糸巻きの状態でウィーバー(製織職人)の自宅に送られます。

そう、ハリスツイードの製造工程のなかで、唯一製織のみが外部の職人によって(そして人力で)行われるのです。




外部のウィーバーを訪れた模様は次回ご紹介させていただきますが、工場内部にもサンプル生地作成用に新旧2台の織機があります。そのうちの1台を実際に体験させていただきました!
そちらも次回。。。

The British Ambassador's Residence in Paris

11/07/2014


先日の出張の話題も今回が最後。
最終目的地のパリでご招待いただいていたレセプションのレポートです。

英国服地関係者が招待されるこちらのレセプションには以前お邪魔したことがありましたが、2年前からウールマークカンパニーも協賛に加わり、羊毛業界全般のより大規模なイベントになっていました。
会場はフォーブルサントノーレの英国大使公邸です。




パリの公邸は「世界の英国大使公邸で最も美しい建築」と言われているそうですが、パリの街並みに溶け込んだ素晴らしい外観を誇ります。




建物に入るとまず迎えてくれるエリザベス女王とエジンバラ公(女王の夫)写真。




1階はレセプションなどでゲストが入れる区画なので、こんな素晴らしい部屋の数々にも普通に入ることができます!大使ご家族は上階に実際に住まれているようです。。。




9月中旬だったこの日は天気もよかったのでガーデンパーティーになりました!
以前の室内のパーティーも素敵でしたが、パリ中心部、エリゼ宮裏のオアシスのような素晴らしい庭園に初めて入ることができました。




ウールマークカンパニー協賛ということで、庭園の一角にはなんとミニ牧場が作られていました!
ちょうどオーストラリアから研修旅行でいらしていたウール生産者の方にお聞きすると、この羊達は(実際にスーツに使われる)メリノ種とのことでした。
日本からの招待客はそれほど多くありませんでしたが、英国ミルの関係者がたくさんおり久しぶりの会話が弾みます。。。




ここでホストの駐仏英国大使、サー・ピーター・リケッツからのご挨拶。
段々暗くなってくると、建物が違った表情を見せてくれます。




シャンパン片手に公邸内を散策。。。
「第2次大戦時にパリがドイツ軍に占領されていた時、この建物はどうなっていたんだろう。。?」とか想いを巡らします。




こちらは通常レセプションの会場となる大広間。

 


こちらの部屋の上座には女王の玉座があります。
柵もなにもありませんが、恐れ多くて勿論座ることなどできません!




夜が更けても宴は続きます。
このような機会はなかなかありませんが、一時の優雅な時間を愉しませていただきました!