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KUZURI KEORI

12/25/2012

先月神戸のイベントに車で行った帰り道、今までなかなかお邪魔できなかった愛知・一宮の老舗ミル(織物工場)“葛利毛織”さんを訪問してきました。
こちらでは、弊社のオリジナルライン“MAXIM-TEX”を長い間織っていただいています。

明治末期の創業以来、日本の毛織物の一大産地である尾州でも特に「品質の高い生地」を生産することで知られてきた葛利さんですが、このクラシックな外観の社屋のなかで稼働している織機は現在もほぼ全て旧式のションヘル織機!
木のシャトルを使うこの織機は生産に大変な手間と時間がかかりますが、経緯(縦横)の糸がしっかりと絡み合った立体的でふくらみのある生地が織り上がるそうです。
実際、弊社のMAXIM-TEXもテーラーさんから褒められることが多い「アイロンがよく効き、仕立て映えがする」生地なのですが、この生産風景を見れば納得です。

噂には聞いていたものの、やはり驚いたのはその趣のある建物!
高度成長期で時代が止まったかのようなレトロな雰囲気のため撮影の依頼も多く、有名なテレビドラマ「官僚たちの夏」でもロケ地になったそうです。
また、尾州の歴史ある織物工場独特の「のこぎり屋根」は、その名の通り横から見るとのこぎりの刃の形状をしているのですが、これは一日中北からのやさしい自然光を取り入れる工夫なのだそうです。

国産でもインポートでも、このようにストーリー性に富んだ高品質服地を扱える幸せを改めて感じる今日この頃です。






KEEPER'S TWEED

12/17/2012

前回に引き続き生地のお話をさせていただきます。

昨今のツイードブームのなか、洋服好きの皆さまから密かな注目を集めているのがこちらの“KEEPER'S TWEED(キーパーズツイード)”。英国では有名な生地なのですが日本ではあまり知られていないので、初めてその名を聞かれる方も多いかと思います。この生地の名前は“GAME KEEPER(ゲームキーパー)”から来ているのですが、これは英国独特のある職業の名称でもあります。
その職業を日本語に訳すと「猟場の番人」。
#英語の“GAME”には、「猟獣・猟鳥(=獲物)」という意味があります。

英国では昔からある職業で、貴族や領主などの敷地内にある猟場のメンテナンスを行います。
全英で今でも数千人のプロフェッショナルGAME KEEPERがいるそうですが、現在上映中の“007 SKY FALL”でも、スコットランドのボンド家に長く仕えてきたGAME KEEPERが登場します。(残念ながら着用していたのは普通のツイードのようでしたが。。。)

32オンス(約900グラム)と肉厚の生地は、草木の茂みや荒野などでひっかけても服が破れないように高密度で織り上げられており、オリジナルのカラーも保護色であるブラウンとグリーンの2色のみ。
こんな質実剛健なKEEPER'S TWEEDですが、近年は狩猟をする貴族階級自身も着るカントリーウェアとしてその良さが見直されてきています。

残念ながら弊社では現在お取り扱いがないのですが、もしどこかでKEEPER'S TWEEDのジャケットを見つけられましたらその名の由来を思い出してみて下さい!

BRITISH WARM

12/10/2012

いよいよ寒さが本格的になり、ウールのコートが活躍する季節になりましたね!
近年はビジネスシーンでも非ウール(ナイロンなど)のコートを着られる方が増えていますが、しっかりと仕立てられたウールのコートのエレガントさに優るものはないと勝手に思っております。(勿論、カシミアもいいですが、満員電車には乗りたくないですよね!笑)
今回は、「知る人ぞ知る」ちょっとマニアックなコート地をご紹介いたします。

その名は“BRITISH WARM”。
起源を第一次世界大戦当時にまで遡り、英国王立軍の将校用コート地として開発されたこの生地は、その希少さゆえ「幻の生地」とも呼ばれています。
ウールのメルトンに近い組織で若干起毛されているのですが、そのウェイトは(復刻されている当時より軽いものでも)850gmsと通常のコート地の2倍以上あります。
圧縮され目が詰まっているので、その質感は毛布以上のハードさ!
カラーは「Taupe(トープ)」と呼ばれる1色のみで、グレーがかったベージュは「モグラ色」とも評されます。
英国では退役軍人会の方がよく着ている気がするのですが、最近はこのユニークな生地を現代風にアレンジしてデザインされたコートも見かけるようになりました。

残念ながら手間暇がかかる“BRITISH WARM”の生産量は減っていく一方なので、いつか入手できなくなる日が来るかも知れません。
今はHARRISONSのオーバーコートコレクションに編集されていますので、「一生もの」のコートにぜひいかがでしょうか?
(OVERCOATINGS 83929)

H. LESSER & SONS

12/03/2012

業界通の方はご存じかもしれませんが、「高品質服地にこだわるロンドンマーチャント」として独特のポジションを確立してきたH.LESSERは、2年前に英国最大のファミリーマーチャントLBD-HARRISONSグループの傘下に入りました。
オフィスをロンドンに残し、H.LESSERのオペレーションとストックはグループ本部のエクセタ―にすでに移動しています。

オーナー企業が変わっても同ブランドのラインナップはほとんど変わりなく、洋服好きを唸らすオーセンティックでしっかりとした服地が揃っています。
特にアイコニックな“ラムズ・ゴールデンベール”は、選び抜かれた超希少な原毛から織り上げられ、紳士服の聖地サヴィル・ロウに於いてもテーラーが最もリスペクトする服地の一つだそうです。

詳しくは今は申し上げられないのですが、来年の夏に公開される「超大物ハリウッドスター」が主人公を演じる「往年の超名作映画のリバイバル版」においては、H.LESSERの服地が撮影衣装用に大量に使われ、プレミア上映ではなんとこの超大物俳優がこの“ラムズ・ゴールデンベール”を着て登場する予定だそうです。
(私は仮縫い中の写真を見せてもらいました。あの有名な船に乗っていた方です!笑)

欧米の有名映画では撮影用衣装の服地もこだわることが一般的で、LBD-HARRISONSグループのコレクションからも多くが採用されています。
クオリティーの良し悪しは、スクリーンを通してもきっと分かってしまうんですね!?